医師 非常勤が必要としているもの
ポストがなければ人材は育たない、というのはちょっと逆説的ないい方かもしれないが、日本の企業に大企業病がよく見られるのは、案外簡単な理由であり、地位ポストを減らしているからである。
たとえばひとつの課長のポストに一〇人も二〇人も候補がいるとすれば、それを得点で決めようというのはそもそも無理な話である。
得点というのはある意味では評価が主観的だからむずかしい。
減点法の方がやりやすい。
だからついつい減点主義人事になってしまう。
私などは、したがって課長クラスのポストなど思い切って増やしていけといっている。
日本の企業というのは、たいてい課長クラスでもっている。
私もサラリーマンを経験したが、課長クラスのときがいちばん忙しい。
自分の仕事のノルマもあるし、部下も指導しなければならないポストだからである。
だから課長というのは本当の第一線の部隊長である。
部長になれば、少々ボンクラでも、人づかいがうまければそれでいい。
部長がボンクラで、課長もボンクラの会社は確実につぶれる。
課長のポストが多ければ多いほど、すぐれた人材が選ばれるチャンスが多い。
会社を強くするには、課長のポストをふやすのがいちばん手っとり早い。
地位ポストを減らしていくから個性のある社員とか、能力のある社員が選ばれない。
無難な社員が選ばれてしまうのである。
しかも、いまは価値の多様化時代で昔のような大きな市場はない。
かつてのように、大部隊で走っていく時代ではない。
機動力の時代だから小部隊の課長制でどんどん前へ進んでいけばいぃ。
そうすると昇進のチャンスがいっぱい出てくる。
みんなに競争心を満足させてやれるのである。
ただし、これには前提条件がいる。
それは、ポストをむやみに増やすのではなくて、おとすことも同時に考える必要がある。
いま管理職から上のクラスこそもっと勉強しなげればならない時代なのにあまり本気で勉強している気配がないのは、いったん手に入れた地位ポストが既得権になっているからである。
これが既得権なら、しんどい勉強などする必要もあるまい。
日本の大学の教授レベルが落ちているといわれるのも、そこにある。
いったん教授になったら、絶対にクビにならないし、肩書きも取り上げられない。
日本の企業は大学の先生をバカにしているが、日本の企業でも似たようなことをやっているのが多い。
いったん部課長になれば、よほどでなければ落ちない。
期待を裏切った人材はやはり落としていかないとだめなのである。
もちろん落とすこともあるかわりに、また再挑戦のチャンスをやればいい。
落として「あなた、もうおしまいよ」とやるから、本人がっくりきてしまうし、部下は部下で、あっさり「それではさようなら、もうゴマもすりませんよ」とつれない言い方をするようになる。
サラリーマンというのは厳しいもので、チャンスのない人には近寄らない。
Fというマンガにあったが、定年間近になったら、だんだんお歳暮が減っていって、退職したら全くのゼロになっていくのである。
そういうところでは妙にドライである。
だから課長になっていて落ちていく人にも、再挑戦のチャンスをやらないといけない。
あるいはほかの部門の課長に使えるかもしれない。
このように弾力的に運用していけばよい。
社員が膨れあがったから課長のポストが少ないのが当然だ、と頭から決める必要はない。
いくらでも増やせる方法はある。
また本当のエリートはなるべく一度は、子会社や地方に出した方がよい。
日本の社会というのは嫉妬社会だから、エリートだけを特別扱いするとみんなが反感をもったり、シラケたりする。
一部の社員だけを特別扱いにしゃがってとなる。
案外、銀行や商社でもそういうことをやっているところがある。
本社のエリートは滅多に海外へ出さない、つらい地方の支店の営業をやらせない。
しかしそれが逆であることは、くり返し述べたとおりである。
最もつらいところで苦労してはい上がってくればだれも文句をいわない。
みんなが横並びのところで特別待遇するから文句をいう。
エリートにはやはりイギリスのエリートが持っている高貴な義務感のようなものが必要である。
困難な仕事を引き受ける、いざというときに真っ先に前に出る。
これを日本で育てていくべきである。
悪名高い人材活用センターをデッチ上げて、元国鉄職員をあれほど苦しめながら、さっさと自分は敵前逃亡して、島根県知事に成り上がった国鉄最高幹部のような品性のないエリートをつくるべきではない。
本社の三十代の幹部候補に、新規事業や新製品の開発、新しい商権の獲得などむずかしいが、会社にとってとりわけ大事な仕事をやらせるのが理想的である。
だが、大企業はなかなかそれができない。
古い大企業が分社とか新規事業にあまり成功しないのは、これをくたびれてきた中高年にやらせているからである。
新規事業というのはいちばん厳しい分野の仕事であることを忘れている。
本業はいちばん楽な仕事の分野である。
したがって本業という守りの部門は、足腰は弱ったかもしれないが、体験も知識も人脈もしっかりしているベテラン、中高年でやらせた方がよい。
本社のエースや若手には、会社の新規事業部門中心にやらせていくべきであろう。
だれでもわかる困難な仕事をさせ、それを引き受け成功した人を、思い切って抜擢しても、だれも文句はいうまい。
他流試合のすすめこれからは、もう一軍だけではなくて、人材派遣業とか、主婦の再雇用、契約社員とか、いろいろな形で二軍、三軍を活用して、一軍の効率化をはかっていく時代だと先ほど述べた。
そのほかに、これから始まるのは外部知識と内部知識の交流時代である。
世間で超一流のマーケッタ!とかスーパースペシャリストといわれている人を企業のブレーンにしていけばいい。
一流の技術者とか、マーケティングの専門家とか、財テクの専門家、シンクタンクのメンバーだとか、こういうのをブレーンにしていけばいい。
そういう外部知識を企業内にたくみにとり込むことによって、企業はさらに強くなっていく。
またブレーンのほうもそのほうがいい。
ブレーンを一生お抱えにするからおかしくなる。
ブレーンの寿命はいいところ五年ぐらいであろう。
そこの会社で値打ちが下がったブレーンはまた別のところへいけばいいのである。
こういう外部の技術と知恵の部分をいかに組織化できるかである。
外部人事と内部人事交流というのはそういうことである。
スカウト人事をやるだけではなくて、契約社員とか顧問とかを増やしていったらいい。
みんな抱えようというのはどだい無理であ広v。
研究所でも、それをさらに効果を上けるためには、外部と内部を常に競争させることである。
そうしないと、本当の競争にならない。
たとえばH製作所というのは、博士号の学者をたくさん抱え、日本一の研究施設をもっているわりに研究開発の成果が案外少ない。
思ったより成果が少ないのは、仲良しクラプのようなもので、競争原理がないからである。
いまハイテク関係の一流企業は、もちろん内部に立派な研究機関をもっているが、一方でベンチャー企業にも研究費をどんどん出している。
企業内の研究者とベンチャー企業とを競争させている。
そういう面からも外部の知恵、知識の組織化が大事になっている。
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